Agent Search(旧Vertex AI Search)のboost / buryとは

Agent Search(旧Vertex AI Search)は、Googleの検索技術と生成AIを融合し、Webサイトや社内の各種ドキュメントといった企業が持つあらゆるデータに対して自然言語による検索・回答生成ができるサービスです。

社内ドキュメント検索やサイト内検索において、「ユーザーが本当に求めている情報」を上位に表示させることは、検索システムの使いやすさを大きく左右します。Agent Searchでは、デフォルトの状態でもクエリに応じた適切な情報を上位表示できますが、自社に最適な検索結果へとチューニングするための設定も可能です。

本記事では、Agent Searchで検索順位をコントロールするための3つの機能(スキーマでの重み付け、コンソールでの設定、APIでの設定)について解説します。

目次

Agent Searchで検索順位をコントロールする方法

Agent Searchの引用元の順位調整機能は、特定の情報のスコアを意図的に高くして、AIが回答を作る際の有力な情報源として選ばれやすくするための仕組みです。

ユーザーにとって最適な情報を提示するためのアプローチは、大きく以下の3つに分かれます。まずはそれぞれの役割の違いを把握しておきましょう。

  1. 手法①:スキーマでの重み付け
    検索システムにデータを登録する際の商品名や説明文など、データがどんな項目で作られているかをシステムに設定します。この項目の定義を「スキーマ」と呼びます。

    ここで、検索されたキーワードが「商品名」というスキーマで登録した項目に含まれている場合に、そのデータを高く評価するといったように、重要視する項目や、逆にあまり考慮に入れたくない項目を指定できます。Agent Searchでは、「検索可能フィールドの重み付け(プレビュー版)」という機能名で、この重みづけが可能です。
  1. 手法②:Boost / Bury(コンソールでの指定)
    特定の条件(例:特定のブランドやカテゴリなど)を満たす情報の順位を、システム側で強制的に引き上げる、または引き下げる機能が「Boost / Bury」です。手法①はあくまでキーワードによる検索に対するルールですが、この手法では例えば「評価が4以上のレシピのページが評価されやすくする」など、より直接的に検索順位をコントロールすることができます。

    Boost / BuryはAgent Searchのコンソール上から設定することができ、検索するたびに毎回適用される固定のルールとして機能させることができます。
  1. 手法③:Boost / Bury(リクエスト時の指定)
    Boost / Buryは、APIを介して実際に検索を行うタイミングで指定することも可能です。手法②とは異なりユーザーが検索が実行するたびに条件を変更できるため、UI上に絞り込み機能を付けるなど、ユーザーの操作に応じたより細かい制御ができます。

これら3つの機能をシステムの目的に合わせて組み合わせることで、精度の高い検索を実現できます。

検索可能フィールドの重み付けの設定方法

検索可能フィールドの重み付けは、2026年7月現在プレビュー版として提供されている機能です。

「検索可能フィールドの重み付け」の設定を使用すると、Agent Searchで検索対象となるデータストアを作成する際に、どの項目のテキストを重要視して検索をすべきか設定することができます。

Agent Searchでは、デフォルトでtitleやdescription などの主要な項目を重要なファクターとして検索を実行するように動作します。通常はこのデフォルトの動作で十分ですが、デフォルトのままでは満足のいく検索結果が得られない場合にこの機能を使用して検索結果の調整をします。

【設定時の重要な注意点】

  • APIからの設定のみ可能
    この重み付け機能はコンソール画面からは設定できず、API(projects.locations.dataStores.schemas.patch メソッド)を使って設定する必要があります。
  • 主要項目への制限
    すでに高い重みが適用されている title や description といった主要な項目には、新しく重みを指定することはできません。
  • 反映までの時間
    設定後、スキーマの更新とデータの再読み込み(再インデックス登録)が必要になるため、反映までに数時間かかる場合があります。

重み付けのレベルは以下の5つがあり、状況に合わせて適切に設定します。

重み付けレベル概要
very_low影響力を最小限に抑えるレベルです。完全に影響をなくしたい場合は、フィルター機能で除外することを推奨します。
low標準よりも少し影響を下げるレベルです。
default基本となる標準のレベルです。多くのケースでは、この設定のままで十分な検索精度が得られます。
high標準よりも影響を強め、優先的にヒットさせたい項目に設定するレベルです。
very_high最も影響力が強いレベルです。通常、システムの中で一番重要となる「1つの項目」のみに限定して使用します。

Boost / Bury機能の設定方法

特定の条件に当てはまるドキュメントのスコアを意図的に足したり引いたりして、検索順位を動かす仕組みが「Boost / Bury機能」です。この機能は、データを取り込み直すことなく、即座に検索結果のスコアに反映できるのが大きなメリットです。

  • Boost機能(順位の引き上げ)
    数値をプラスの値(0.0より大きく1.0以下)に設定すると、条件に当てはまる情報のスコアが加算され、順位が上がります。
  • Bury機能(順位の引き下げ)
    数値をマイナスの値(-1.0以上0.0未満)に設定すると、スコアが減算されて順位が下がります。検索結果から完全に消してしまうわけではなく、優先度を落として下位に沈めるための機能です。

Boost/Buryの設定には、コンソール画面から設定する方法と、APIで指定する方法があります。それぞれ設定できる内容や適用される範囲が違います。

Agent Searchのコンソールから設定する方法

Google Cloudの管理コンソール画面からルールを作り、検索エンジンに適用する方法です。設定したルールはすべてのユーザーのすべての検索に対して常に適用されます。

サイト全体の基本方針(例:「自社のプライベートブランドは常に上位にする」「在庫切れの商品は常に下位にする」)を設定する際に使います。

【設定の流れ】

  1. Google Cloud コンソールで、[AI Applications] ページに移動し、該当のアプリケーションを開きます。
  2. アプリの概要 > システムの概要 > シグナル > Boost/Bury を選択します。
  3. 「コントロールを作成」から新しいコントロールを作成します。
    1. コントロールに名前を付けます。
    2. データストアを選択し、Boost/Buryの数値を決めます。
    3. 必要に応じて、ルールを実行する条件を設定します。特定のキーワードで検索された時だけ有効にする、特定の期間だけ有効にする、といった細かい制御も可能です。
    4. 追加設定で、変更を即座に反映させるかどうかを決めます。

APIリクエストで設定する方法

検索を行う際(API通信時)に、送信するデータの中に一時的なBoost / Buryの条件を混ぜて送る方法です。この方法で設定したルールは、その検索1回に対してのみ適用されます。

例えばユーザーが画面上で「セール品を優先して表示」というチェックボックスを押した時だけ順位を変える、といった制御をしたい場合に、この機能を使うことができます。

【設定の仕組み】

  1. 検索APIを呼び出す際のプログラム内で、boostSpec というパラメータを指定します。
  2. パラメータ設定例:condition: "availability: ANY(\"sale_of_stock\")" に対して、boost: 0.8 のように指定してリクエストを送信します。
{
  "boostSpec": {
    "conditionBoostSpecs": {
      "condition": "availability: ANY(\"sale_of_stock\")",
      "boost": 0.8
    }
  }
}

例えば、上記の condition: "availability: ANY(\"sale_of_stock\")" という式は、「availability(在庫状況などの属性)という項目に、sale_of_stock(セール品)という値が含まれているドキュメント」を対象にする、という意味を持っています。

これにより、その1回の検索結果においてのみ、セール品(sale of stock)の商品のスコアが高く評価され、有力な情報源として上位に表示されやすくなります。

3つの順位調整機能の使い分け

ここまでに解説した3つの機能は、「何を評価するか」「どこで設定するか」「どの範囲に適用されるか」が異なります。システムの目的に応じてこれらを使い分ける必要があります。

  • 検索キーワードが「どの項目(タイトルか本文かなど)」に含まれているかを評価したいなら、「スキーマの重み付け」を使用します。
  • 「自社製品」など特定の条件を満たすものを常に優遇したいなら、コンソールの「Boost / Bury設定」を使用します。
  • ユーザーの操作(絞り込みなど)に合わせて一時的に順位を変えたいなら、APIの「Boost / Bury設定」を使用します。

各機能の違いを整理すると以下のようになります。評価対象(何を見て判断するか)の違いに注目してください。

項目検索可能フィールドの重み付けBoost / Buryの設定(Google Cloud コンソール)Boost / Buryの設定(API)
設定する場所スキーマ定義コンソール画面検索APIリクエスト時のリクエストボディ
評価の対象テキストのみテキスト以外にも数値や日付のフィールドを参照可能テキスト以外にも数値や日付のフィールドを参照可能
効果の持続性常に適用される常に適用される検索1回のみ適用される
主なユースケース商品名を表す項目に検索したキーワードが含まれている場合に、より高く評価する自社の注力カテゴリの商品を、誰が検索しても常に上位表示する画面の絞り込み条件(セール品を優先表示など)に応じて、一時的に順位を動かす

順位調整の際に参照できる対象・適用されるタイミングがそれぞれ異なるため、違いを理解して適した手段を選択することが重要です。

まとめ

本記事では、Agent Searchで検索順位を調整する具体的な手法について解説しました。スキーマでの重み付けと、Boost / Bury機能(コンソールによる全体適用・APIによる動的適用)の特徴を理解し、うまく組み合わせることで、ユーザーが求めている情報へスムーズにたどり着ける検索システムを作ることができます。

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    Agent SearchがWebサイトのデータから自動的にRAGを構築するため、面倒なデータ処理は不要です。Webサイトの更新と共にデータは更新されるので、運用中のデータ保守も不要です。
  • 出力の自動テスト機能を搭載
    想定される質問のリストに対して回答生成を自動でテストする機能を搭載しています。ドキュメントの更新やプリアンブルの調整にお役立ていただけます。
  • システム改修不要で導入可能
    Googleタグマネージャー(GTM)を利用してタグを設置するだけで導入できるため、既存のシステムやサイトのソースコードを改修する必要がありません。

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