検索結果にAIによる概要(AIOV)が表示されるようになり、Webサイトのアクセス数値には変化が生じています。
本記事は実際のアクセスデータや検索順位、クリック数などの計測値を元に、AIによる概要の導入がサイトパフォーマンスにどのような影響を与えているか調査したレポートになります。データを踏まえた自社サイトの検索状況の分析や、今後のコンテンツ運用の方向性を掴むためのヒントが得られます。
AIOVの登場で検索数は減少したのか
AIによる概要(以下、AIOVと表記)の影響については、立場によって意見が大きく分かれています。これはどちらの見解も正しく、分析している視点が異なることに起因します。
マクロ視点では検索市場全体としてアクセスは増加傾向
Googleのようにインターネット全体を俯瞰できる立場からは、全体としてアクセスは増えているというデータになります。
ネット全体のコンテンツ量は日々増加しており、ユーザーの検索行動自体もデバイスの普及や検索方法の多様化によって拡大傾向にあります。検索市場全体の自然な拡大ペースが非常に大きいため、AIOVの出現によって生じたクリック減少の要素が全体の中に埋もれ、打ち消されてしまいます。
その結果、プラットフォーム全体を見ている立場からは、検索数は減っておらずむしろ増えているという見解になります。
個別サイト視点では急激なトラフィック減少も発生
個別のWebサイトを運営している立場やクライアントのサイトを管理する立場からは、アクセスが激減しているという声が上がっています。
そもそもWebサイトは、SEOの順位変動や検索ボリュームの季節トレンドなどによって常に大きく数値が変動しています。さらに毎月新規コンテンツを追加したりすることで、検索からの流入が増える要因も働いています。そこにAIOVによるクリック数減少という要因が重なるため、複数の要素が絡み合って影響を特定しにくくなっています。
その中で、AIOVの影響が突出して大きいサイトでは、コンテンツ追加による微増や日常的な順位変動を完全に打ち消すほどの急激なアクセス減少が発生しています。
個別サイトにおける実際の影響度を測る調査検証
多様な変動要素が絡み合う中で、通常運用されているWebサイトが受けている影響の程度は「よくわからない」というのが実態です。
そこでこの影響の程度を検証するため、独自の調査を行いました。具体的には月間10万アクセス以上を持つ大規模な一般サイトを抽出し、その実態を探っています。全網羅なデータではありませんが、実務における傾向やインパクトを把握するには十分な検証結果と言えます。今回行った3つの調査結果を順番に解説していきます。
調査①サイトごとのクエリの「AIによる概要」表示
検証の第一歩として、分析対象サイトの主要クエリにAIOVがどの程度表示されているのか、その表示率の実態を調べました。
月間10万クリック以上の20サイトを対象に、クリック数上位80クエリを抽出し、検索したときのAIOVの表示状況を観測しました。データ期間は2025年の7月になります。
サイト種別ごとのAIOV表示率の傾向は異なる
サイトのドメインや取り扱うテーマの特性によって、表示率は0%から98%と極端な差が出ました。

まずメディアサイトでは、97.5%でAIOVが表示されるケースが2件確認され、高い表示率となりました。一方で、サイトによっては10%台にとどまるケースもありました。このことから、「メディアサイトだからAIOV表示率が高い」のではなく、「メディアサイトの中にはAIOV表示率が高くなるサイトが存在する」と捉えることが適切です。
次にサービスサイトでは、全体的にAIOVの表示率は低い傾向でした。ただし、一部のサイトでは82.5%という高い表示率も確認されています。サイトのコンテンツ構成や提供している情報の形式によって、AIOVの表示状況は大きく変化することがわかります。
最後にプロモーションサイトでは、概ね50%以上のクエリでAIOVが表示される傾向が確認されました。
今回取得した全データの平均表示率は46%でした。つまり、一般的なサイトにおけるAIOVの表示状況は、「検索結果の約半数で表示される」と考えることができます。
AIOV表示有無によってCTR分布は変化する
さらに、AIOVが表示されるクエリにはどのような特徴があるのかについても調査しました。

グラフ上に各クエリを1つの点として表示し、AIOVの有無で赤と青に色分けしています。縦軸は検索順位で、上に行くほど順位が高く、最上部が1位です。横軸はCTRで、左が0%、右が80%を示しています。この「順位 – CTR」の分布を見ることで、AIOVの有無によってクリック率にどのような違いがあるかを比較します。
ただし、点を配置するだけではCTRが高いのか低いのか判断しづらいため、一般的なCTR曲線を基準線として追加しています。「1位で約30%、2位で約15%、3位で約10%、4位で約8%」といった目安となるCTR推移を線で示し、この線より右側にあるか左側にあるかを見ることで、各クエリのCTR傾向を把握します。

グラフの「青」は、AIOVが表示されていない、従来型の検索結果(SERP)です。
AIOVの影響を受けない通常の検索画面では、一般的な検索順位とクリック率(CTR)の関係が表れています。分布を見ると、標準ラインより右側、つまりCTRが比較的高い領域に多く存在していることが分かります。また、点の広がりも大きく、幅広い範囲に分布しています。今回は比較的成果の出やすいクエリを対象としているため、全体的にCTRは高めで、標準ラインより右側に寄った傾向が確認できました。

一方、「赤」はAIOVが表示されている検索結果です。こちらでは、青のケースとは異なる特徴が見られます。まず、標準ラインより左側、つまりCTRが低い領域に分布する傾向があります。また、点の広がりも狭く、高いCTRを示す領域にはほとんどデータがありません。つまり、AIOVが表示される検索結果では、クリック率が非常に高いケースが減少し、全体的にCTRが一定範囲に収束していることが分かります。
この結果から、AIOVの表示は検索結果上でユーザー行動に影響を与え、従来の検索結果と比べてクリック率の分布を変化させている可能性が示されています。
調査②「AIによる概要」の表示有無によるCTR・順位分布の違い
調査②では、調査①で取得した複数クエリのデータを、AIOVが「表示されているもの」と「表示されていないもの」に分けて集計し、全体の傾向を分析しました。
なお、企業名などの指名検索クエリは基本的に除外しています。
AIOV表示時はCTRの分布が狭くなる
集計結果を見ると、調査①で確認した傾向と同様に、AIOVの有無によってCTRの分布に違いが見られました。グラフの縦軸が「表示順位」、横軸が「CTR(クリック率)」になります。

AIOVがあるクエリ(赤)では狭い範囲に集中しており、特に標準線の左側、つまりCTRが低い場所に偏っていることがわかります。AIOVがないクエリ(青)では赤と異なり標準線からはみ出した拾い範囲に分散しています。特に高順位では右、つまりCTRが高い範囲に偏っています。
1位表示の価値が低下している
プロット数が多くデータが重なっているため、このままでは傾向を把握しづらい部分があります。そこで、データをヒートマップにして確認してみましょう。
このヒートマップでは、色が赤くなるほどデータが集中していることを示しています。つまり、クエリがどの検索順位に集中しているのかを視覚的に把握できます。
データを確認すると、特に大きな違いが見られるのが検索順位(グラフの縦軸)の1位付近です。

AIOVが表示されていない場合、グラフの上部である1.0位付近にデータが集中しており、検索結果1位を獲得したページが高いCTRを得ています。しかし、AIOVが表示される検索結果では、この「1位に集中する」という特徴が弱くなっており、1位から3位に関しては、明らかにCTRが落ちています。
このたくさんのデータを実際に集計した表が、以下になります。

順位別にCTRを比較すると、AIOVが表示されていない場合と比べ、表示されている場合ではクリック率が大きく低下しています。具体的には、同じ検索順位で比較した場合、CTRはおおむね30%前後減少しています。また、順位ごとのCTR低下率を見ると、1位〜4位では約23〜31%程度の減少が確認されました。つまり、AIOVの表示によって、単純に検索順位が変わらなくても、検索結果から得られるクリック数は減少します。
中でも注目すべき点は、従来もっともCTRが高かった1位ページへの影響です。AIOVが表示されない場合、1位ページのCTRは約36%に達していました。しかし、AIOV表示時には約15%まで低下しています。これは約60%の減少にあたり、AIOVによるクリック減少の大きな要因になっています。
背景には、AIOV内の引用リンク表示があります。AIOVでは、従来の検索結果のように1つのページが単独で1位になるのではなく、複数のページが引用元として表示されます。また、検索するタイミングによって引用されるページも変化します。そのため、「常に1位を獲得しているページ」が存在する状態から、「複数ページが1位相当の露出を共有する状態」へ変化しています。
調査③同一クエリにおける1年間のCTR過去比較
調査②では「現在のAIOVの有無」を横断で比較しましたが、調査③では「同一クエリにおける導入前後での変化」を追跡しました。同じクエリが導入前と後でどのように動いたのか、AIOVが一般公開される前の2024年7月のデータと、本格導入から1年が経過した2025年7月のデータを比較し、同じクエリにおけるクリック率の推移を計測しました。
同一順位でも8割弱のクエリでクリック率が低下
条件を揃えるため、同一順位を維持している同一クエリを抽出して分析しました。

導入前の過去データでは、SEOで成果を出している主要クエリの多くが高いCTRでクリックを獲得しており、CTRが30%や40%、場合によっては60%を超えるような高パフォーマンスな領域にもデータが広く分布していました。
しかし、AIOVが定着した現在のデータを重ね合わせると、全体的な分布が大きく左側、つまり低CTRの領域へとシフトしています。以前のように突出して高いCTRでクリックを獲得できていた広大な領域からはデータがほぼ消滅しており、AIOVの出現によって「検索1位を取れば大量のアクセスを獲得できる」という従来の前提そのものが崩れ去っている実態が分かります。
同期間における上位同一クエリごとのCTRの変動率を集計したデータは以下の通りです。

順位が変わっていないのにもかかわらず、対象となった検索ワードの約72%でクリック率(CTR)が低下しました。全体の平均で見ても、クリック率が24%(約1/4)減ったことになります。
さらに深刻なのは、対象ワードの32%で、クリック率が半分以下にまで落ち込んでいたことです。順位は1位のままなのに、アクセスだけが半分以下になってしまうという現象が起きています。
一方、アクセスが増加(または横ばい)したクエリも存在します。これには主に2つの要因が推測されます。
- AIOVが下位に表示されたケース: AIOVが1位ではなく4〜5位など中位に表示されたことで、上位記事への流入に悪影響が出なかった。
- AIの回答だけでは不十分なケース: 内容が複雑、あるいはAIの回答品質が低く、ユーザーがWebサイト側で確認・深掘りする必要があった。
すべてが一律で減少し続けるわけではなく、「AIによる回答だけで完結するかどうか」が明暗を分ける分岐点となっています。
一般的な質問やビッグワードほどアクセスが激減
もともと高いクリック率でクリックを獲得していたクエリの多くは、「〜とは」といった言葉の定義や、「〜の方法」のような一般的でシンプルな質問でした。これらは検索結果の1位をひとつ確認すれば十分なケースが多く、AIOVが得意とする要約処理と非常に相性が良いという特徴があります。
そのため、これまでは1位をクリックしていたユーザーの行動が、検索結果画面のAIOVを読むだけで完結するゼロクリック検索へと変化しました。その結果として、こうした簡易な解説クエリで極端に高いクリック率を得ていたコンテンツほど、アクセスが激減する大きな痛手を追うことになります。
特に影響が大きいのが検索ボリュームの大きいビッグワードです。過去に何千・何万もの主要クエリで1位を獲得し、そこから大量のトラフィックを集めていた著名なメディアサイトほど、AIOVへの代替によって急激なアクセス減少に見舞われていると考えられます。
AIによる概要(AIOV)の特性と今後のSEO・AIO
急激なトラフィック減少に直面すると「どう対処すべきか」という問題に突き当たりますが、まずはAIOVの特性とユーザーにとってのメリットを冷静に分析することが重要です。AIOVが得意とする領域と苦手とする領域を正しく理解することで、自社サイトが取るべき具体的なコンテンツ戦略が見えてきます。
ユーザーから見たAIOVの主なメリット
ユーザー視点におけるAIOVの大きな価値は、検索行動の効率化と高度化にあります。
一つ目のメリットは、欲しい情報を短時間で要約して表示してくれる点です。たとえばSEOという用語の意味を調べる際、従来のように長文の解説記事を最後まで読む必要がなく、パッと概要だけを確認して疑問を解消できるようになりました。
二つ目のメリットは、従来の検索キーワードでは対応が難しかった複雑な条件の質問に対し、複数のWebサイトから情報を組み合わせて回答を自動生成してくれる点です。
このように、短時間での要約と複雑な質問への提示という二つの面で、ユーザー体験は大きく変化しています。
AIOVの出現・代替が進みやすいコンテンツ領域
ユーザーからのメリットを考えると、AIによる概要の出現しやすい条件、つまり生成AIが効果的に機能する条件が見えてきます。それは「言葉で簡潔に要約できる情報」と「複雑な条件」を検索した時です。
「言葉で簡潔に要約できる情報」は、言葉の定義や意味の解説、西暦と和暦の変換のような一般知識や歴史的事実などのことです。知識としてすぐ提示できるシンプルなコンテンツはAIOVに代替されやすい傾向にあります。
また、「複雑な条件」とは「地上波とBSの混合ケーブル接続で片方だけ映らない原因」といった、複雑な状況を文章で説明するような質問クエリです。この場合AIが複数の情報源をまとめて回答を作成するため、AIOVが優先的に出現して検索画面上で解決されてしまいます。
Webサイトへの訪問が必須となるAIOVが苦手な領域
一方で、AIOVが出現しにくかったり、表示されても結局ユーザーがWebサイトへ訪問せざるを得ない領域も確実に存在します。
たとえば「靴ひもの結び方」のように図解や画像、動画などのビジュアル情報が不可欠なコンテンツや、「新宿のお花屋さん」といった地域性に紐づくローカル検索、多様な回答が存在するランキング情報などが該当します。また、「高層ビル」のようなクエリはユーザーが何を知りたいのか単語単体の意図が曖昧なため、AIが一方的な概要を出しにくく従来のWeb検索やサイト訪問が維持されやすい傾向にあります。
これからのSEOとAIOに求められる今後の対応
今後のWebマーケティングにおいては、コンテンツの内容そのものによって成果の明暗が分かれていくと考えられます。
独自性・一次情報の必須化
言葉の意味や一般的な知識といった簡易な情報は、生成AIへと順次代替されていく見込みです。ただし、生成AIが情報を参照(リファレンス)するためのWebサイト自体は今後も必要とされるため、一部の著名企業や業界のリーディングカンパニーであれば、従来のSEO施策でも一定の成果を見込めます。とはいえ、過去のような高いクリック率(CTR)を獲得し続けることは極めて困難であるという前提を把握しておく必要があります。
一方で、画像や動画、独自の一次情報など「ユーザーが直接ページを訪問して確かめる必要があるコンテンツ」や、比較・ランキングのように複数の選択肢が存在するクエリについては、今後も検索からのアクセス流入が期待できます。そのため、自社ならではの「独自性・専門性」をどう表現するかがSEO対策の中心となります。
クエリの性質に応じたSEOとAIOの使い分け
また、クエリの性質に応じた最適化アプローチの使い分けも重要です。例えば、比較やランキングのように多様な回答が存在するクエリ(「新宿のお花屋さん」など)に対しては、今後も従来型のSEOが有効に機能します。
それに対して、検索というより自然文での「質問」に近いクエリに関しては、従来のSEOではなく、AIO(AIに正しく参照されるための最適化)が不可欠となります。そのため、これまでとは異なる新しいコンテンツの設計思想や作成プロセスを導入していく必要があります。
これからのSEOにおいて、独自性や専門性は単なる「推奨される要素」ではなく「コンテンツを制作するための必須条件」となります。従来型のSEOを継続すべきか、それともAIOへシフトすべきかについては、自社コンテンツやターゲットクエリの特性を見極めたうえで対策を進めることが求められます。
今後のWebサイト運用で意識すべき重要ポイント
AIOVの登場により、従来の「1位を取れば大量アクセス」というSEOの前提は崩れ、コンテンツやクエリの特性に応じた柔軟な戦略(SEOとAIOの使い分け)が不可欠となりました。単なる知識提供にとどまらない独自コンテンツの作成と、自社のターゲット層が求める検索体験に合わせた最適化こそが、これからのWebサイト運用において成果を左右する鍵となります。
「なぜこのような急激な検索構造の変化が起きたのか?」という背景や、「具体的にどうやって自社サイトのAIO(AI最適化)を進めればよいのか」といった具体的なアプローチについては、以下の関連記事で詳しく解説しています。今後のコンテンツ制作や戦略立案のヒントとして、ぜひあわせてご覧ください。
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