企業のグローバルサイトのSEO評価
グローバル企業においては、本国国内向けのコーポレートサイトの英語版とは別に、グローバルへ情報発信を行うためグローバルサイトを別途設けるケースが多いです。グローバルサイトは、世界各国からのアクセスを受けることになります。
サイトの性質上、SEOへの期待することは、購入やリード獲得などのユーザーアクションではなく、自社の情報をターゲットに適切に届けることになります。SEO評価としても、単なるランキングや集客数でなく、各国で異なるニーズの違いや実際に使用する言葉など、Webサイトを通してユーザーの一次情報を獲得したいという側面も強いと思います。この記事では、企業のグローバルサイトのSEO評価をする際に、注目すべき点・注意点を解説します。
この記事の主な対象者
- グローバルサイトのWeb担当者で、GA4・サーチコンソール初心者
グローバルサイトの定義
- 企業・グループ問わず各国に企業情報提供を目的とするコーポレートサイト
- 対応言語数を問わず、全世界に向けに統一した情報提供を目的としたサイト
(⇔各国ECなど、国別にサイト・コンテンツを切り替えるサイト)
まず、国別の検索キーワードの見方はこちらの記事で紹介しています。サーチコンソールの基礎的な操作やデータの定義などはこちらでご覧ください。
グローバルサイトのSEOレポート構成例
以下のようなレポート構成を取ることで、多くのグローバルサイトでSEO状況の全体像を把握できます。このレポート構成例は、月次での推移を数年単位でトラッキングすることを想定しています。
サイト全体の基礎指標
指標はPV・流入・検索流入・ユーザー数など基本的なものを選びます。グローバルサイトはその性質上、問合せや資料ダウンロード数などにKPIが置かれることが少なく、アクセス規模や、ターゲットのバリエーション・目的の多様化などに置かれることが多いため、コンバージョンやカスタムイベントなどの複雑なデータよりは、基礎的なアクセス関連データに重きを置きます。
注目コンテンツの基礎指標
サイト全体のデータは、雑多なコンテンツへのアクセスを含みます。IR情報や企業活動情報、ニュースなど、グローバルサイトとして重視しているコンテンツがあれば、そのディレクトリ・ページの基礎指標を集計します。
国別・言語別の基礎指標
GA4を用いて、訪問者のアクセス元国ごとのデータを集計します。どの国からのアクセスが多いのか把握します。膨大なデータとなるので、注力国を定義するか、一部の国別データはその他としてまとめます。
各国語対応しており、ホストやパスなどで言語別にURLが分かれている際は、URLによる集計ができます。アクセス元やブラウザの設定で言語が自動的に切り替わる仕組みを導入しているサイトの場合は、その設定に沿って集計します。
SEOベンチマーク国キーワード一覧
グローバルサイトのSEOを概観するために、担当者の把握できる言語かつ、自社のマーケットとしても大きい国をベンチマークとして定めます。米国やドイツ等を指定されるケースが多いです(が、これは企業により異なるはずです)。
特定の国へのアプローチを期している場合は、その国を定めることもできます。
ベンチマーク国・ターゲットキーワード順位
意識しているキーワードがあれば、そのキーワードをトラッキングします。サーチコンソールのデータはフィルタを設定しない限り全世界での検索パフォーマンスとなるため、これもベンチマーク国を指定してトラッキングします。いくつかの国を定めることで、サイトの各国における評価の違いも可視化できます。
注目ページのキーワード一覧
リリースしたばかりのページや、直近でアクセスの急増したページがあれば追加します。特定の国でイシューとなった話題でグローバルサイトが検索された場合、急激な変化を捉えることができます。
キーワードをテーマでグループ化した評価
英語のキーワードデータは日本語と異なり、特定のキーワードに集約しません。後述するキーワードの特徴を上手く集計する工夫が必要です。
他サイトへの送客数
これは、SEO評価ではありませんが、グローバルサイトから外部サイトへの送客をトラッキングしておくことも多く要望があります。現地法人サイト・採用サイト・ブランドサイトなどへの送客をGA4を使って取得します。
以上が基本的な構成です。
国・言語・コンテンツ(URL)をかけ合わせ、自サイトの活動が評価できるフォーマットを作ります。日本語のみをターゲットとしたサイト評価と最も異なる点は、国別の評価を含める必要がある点です。一方で、すべての国のデータを網羅しようとするのは、定期的なレポーティングとしては膨大すぎて意味がありません。ベンチマークとなる国を定め、トラッキングしていく方が定期レポートとしては学びがあります。
検索キーワードデータを見るときの注意点
順位は国別に集計する
サーチコンソールでキーワードの順位を調べるときは、必ず国でのフィルタを設定してください。サーチコンソールのデータには、全世界のデータが含まれますが、キーワード順位は国により異なります。ベンチマークとする国を設定し、その国に絞り込んで表示することで順位のデータの有用性が上がります。本件については、冒頭で紹介したサーチコンソールで国別のキーワードを見る方法の記事にもう少し詳しく書いています。
英語の検索キーワードは文章が多くなる
日本語では、検索キーワードはスペース区切りの単語になりがちですが、英語の検索キーワードは文章であることも多いです。5W1Hを尋ねる文章や事物の違い、有意性など、検索で知りたいことをそのまま自然な文章として入力します。その結果、サーチコンソールの検索キーワードとしては文章表現の細かな違いが全て異なるワードとして記録されます。
how many xxx |
how many xxx are there |
how many different xxx are there |
how many different xxx |
how many types xxx are there |
how many different xxx exist |
how many xxx are there total |
日本語のキーワードデータでも、1つのページは無数のワードで検索されますが、英語のキーワードはさらにキーワード量が増えます。
日本の検索行動について、「(他国と比べて)日本での検索ワードは簡潔なことが多い」とGoogleも認識していることが過去に経済紙でも取り上げられていました。日本語でのSEOに慣れている方ほど、英語キーワードデータは異なる取り扱いが必要なことを認知する必要があります。
現地の検索結果画面(SERPs)も確認しよう
サーチコンソールの検索キーワードデータは統計データです。実際の各国ユーザーがどのように検索エンジン上で自分たちのサイトを見ているかはチェックする必要があります。
以下のような手段で現地の検索結果画面も確認します。
- パラメータへの位置情報・言語設定付与
- ブラウザ・検索設定の変更
- 現地ネットワークを使用しての検索
現在は特に、検索結果画面が強調スニペットや地図を始めとした、情報に合わせた形式での表示が増えています。自サイトが思わぬ表示になっていないか確認します。モバイル・PCなどのデバイス設定も、ターゲットに合わせて検証しましょう。
また、新しい検索結果表示の機能は米国からテスト・リリースされることが多いため、米国の結果をチェックしておくとGoogleの意図や方向性の理解に役立ちます。
検索評価が低い国があったとき
現地法人・グループ企業サイトとの関係
グローバルサイトで特定の国で検索評価が低かったり、クリックの獲得数が少ないときは、競合他社のサイトによる影響だけでなく、自身のグループ会社や現地法人のもつサイトが上位に表示されていることが要因なことがあります。
現地サイトが独自にある場合、運営社である企業所在地の地理的な近さや、言語対応・ニュース、その国に特化した情報を提供しているなどといった理由から、現地法人サイトが優先的に評価されるケースが比較的多いです。現地法人サイトに十分なコンテンツが配置されていない場合は、グローバルサイトのページが検索されます。国別データを見る際には、現地サイトの有無や現地サイトのコンテンツ構成をある程度把握した上で見ると誤解がありません。
現地法人サイトは別ドメインで運営されているケースが多く、グローバルサイト担当者は現地法人サイトのサーチコンソールへアクセスできませんが、現地のキーワード情報の収集には以下のような方法が取れます。
- 現地法人への協力依頼が可能であれば、サーチコンソールデータの供与を依頼する
- SEMRUSHなどのキーワード調査ツールを利用する
- エミュレートした現地の検索結果画面(SERPs)を取得する
現地サイトに多くの検索流入がある場合、グローバルサイトは相対的に検索流入は少なくなります。現地サイト掲載の情報が古い、一部の情報しかない場合には、自社の情報をターゲットに適切に届けることができていない可能性があります。グローバル側からのコンテンツ提供やサイトの統廃合・リンクなどの施策が考えられます。
サーチコンソールプロパティの設定は適切か
ドメインやサブドメイン、パスで言語を切り替えている場合、自分が使っているサーチコンソールプロパティが対象のサブドメインが含まれているかも確認してください。「ドメインプロパティ」にはサブドメインを含むサイトのデータがすべて含まれます。そうでない場合、見たいサイトのデータが含まれていないプロパティかもしれません。サーチコンソール上部のプロパティ選択画面で、適切なプロパティを選択します。